普通の家庭ほど要注意
「相続対策なんてお金持ちの人の話で、うちには資産なんてないから関係ないわ」と考えていませんか?
実は家庭裁判所の遺産分割調停に持ち込まれる案件の約77%が、資産額5000万円以下の家庭のトラブルなんです!
(令和2年度 最高裁判所 司法統計情報による)
資産家の方は相続に対する関心が高く、専門家の監修のもと相続対策を行っていることが少なくありませんが、そうでない方は自分には関係ないと思って何も相続対策をしていないことが多いことが原因の一つと考えられます。
特にタイトルのように資産のうち大部分が不動産で、現金預金は少ししかないという方は特に要注意です。
例えばAさん一家のようなモデルケースをご紹介します。
- Aさん(80歳)
- 家族は妻と子供2人
- 資産は自宅の土地建物 評価額2000万円、現金400万円のみ
この場合、たしかに相続税という面だけでみれば基礎控除が3000万円+(600万円×相続人の人数)=4800万円分ありますので相続税はかからず、確定申告なども不要です。
「うちは子供達も仲がいいし、相続税がかからないならトラブルなんて起こらないでしょ?」って思いますか?そんなことないですよ!
この事例でいえば、現金の400万円については均等に分けられますので問題になることはあまりありませんが、不動産はその性質上、分割がしづらく公平に分けることが難しい資産であるという点が問題になってきます。
このような資産構成の場合、特にトラブルが起こりやすいので要注意です。
不動産の分け方にはどのような方法がある?
不動産の分け方には次の3つの方法があります。
- 換価分割
被相続人の死後、誰も使う予定のない家で全員が同意するのであれば、不動産を売却して売れたお金を相続人で分け合う方法が考えられます。ただし、不動産には相場があるため、一般の市場で売却をしていく場合は直ぐに希望の価格で売れるとは限らないため事前に相場を確認しておくことなどが望ましいでしょう。また、不動産会社などに買い取りをしてもらうことも出来ますが、その場合の買取価格は市場価格の6~7割程度になることが一般的です。
- 代償分割
もしその家を相続人のうちの誰かが使う予定があるのであれば、その方が単独で相続するという選択肢もあります。ただしその場合、公平に分割しようとするなら残りの相続人に対して持ち分に相当する分の金銭を支払わなければならなくなるため、使用する予定の相続人にある程度資力があることが必要となります。
- 現物分割
不動産が複数ある場合などにA不動産を長男、B不動産を長女などとして現物を分ける方法です。また、広大な敷地であれば一つの不動産を分筆して分けるという方法もありますが今回のモデルケースのような普通のご家庭の自宅では難しい場合が多いでしょう。
このほか、分割せずに一つの不動産を相続人同士で何分の1かずつ持ち分を共有する方法もあります。この方法は一見とても簡単に公平な分配ができるように思える為、「とりあえず共有にしておいたらいいよね。」と安易に選択しまう方も多いのですが、専門家からするとこのように共有という形でまとめてしまうのはとても危険で、決してオススメできません。
なぜ不動産を共有にしてはいけないのか?
不動産を共有としている場合、原則として人に賃貸する、売却するなどの変更(処分)行為を行う場合は全員の同意が必要となります。
そのため、共有者のうちの誰か一人でも仲が悪くなってしまったり、連絡がとれなくなったり、認知症になったりしてしまう等の事が発生すると途端に何かしたくても何もできない状態になってしまうのです。
また、共有者のうちの一人が死亡した場合、問題はさらに深刻になります。死亡された方の持ち分についてもまた相続が発生しますので、その方の配偶者や子供などがその持ち分を所有することになり、その結果、関係性の薄い所有者が複数人にわたるという権利関係が複雑な状態となってしまいます。
実際にこのようなことから相続人が数十人にもなってしまい、どうしようも出来ない状態になってしまってる不動産を相続され、弊社に相談に来られるケースもありますが、その多くは解決しようとしても費用倒れになってしまうような場合が多く、先の世代に問題を残さないためにも、やはり共有はオススメできないということを強く感じます。
どうすればよいのか?
このようなことを避けるためには、例えば生前にあらかじめ不動産を売却し、分割しやすい金融資産に形を変えておき、自身は老人ホームに入居するなどの方法が考えられます。
最近の老人ホームは昔のように要介護状態になってから入るところ、というものだけでなく、見守りや食事サービスがあるだけで普通のマンションと変わらない感覚で入居できるサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなどもあるので、「老人ホームなんてまだ早いわ」と思い込まずに一度見学などしてみてもいいかも知れません。
ただそれでも、まだ元気なうちから相続対策だけのために住み慣れた家を離れるという決断をできる方も少ないのではないでしょうか。
相続対策はしたいけどそのまま自宅には住み続けたい、という方にはリースバックという手もあります。
これは自宅を不動産会社などに売却すると同時に、買主である不動産会社から元々の自宅を賃貸で借りるという方法です。この場合、自宅には住み続けたまま不動産が現金という分けやすい形になるほか固定資産税・火災保険料・修繕費などの維持コストが不要になるなどのメリットがあります。
また、遺言書を作成しておくなどの方法も有効です。遺言書があれば特定の相続人に指定した財産を譲り渡すことが可能です。ただし、遺言書の内容に偏りがあると相続人間で不満が出るなどのトラブルが起こることもあり、遺言書の作成にあたっては相続人やその配偶者を交えてよく話しあうことが重要です。
その他にも、相続人を受取人とする生命保険を活用して、代償分割の資金や遺留分の支払い資金を準備できるように利用するなどの方法も考えられます。
相続対策と一口に言っても、ご家庭の資産状況や家族構成、それぞれの方の想いによって取るべき方法は様々です。
専門的な知識や適切な対応力が求められる大切なことですので、信頼のおける専門家に早めに相談することをオススメします。
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株式会社都ハウジング
荒川 博(公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、相続実務士)
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この記事は2022年4月時点の法令等に基づき作成しています。なお、相続税や法律上の取扱いについては必ず専門家に確認のうえ行ってください。本記事の記載内容による損害については当方は一切責任を負いません。